30代で看護師を目指すのはアリ?就職先は?学校生活はどうなる?「30代・新卒看護師」の事例をもとに成功法則を導き出す
ツイート看護師を目指す人の年齢層は広がっている
3年前まで、私は看護師として大学病院に勤務する傍ら、看護専門学校の外部講師として授業に出向いていました。
授業に出向くのは月に合計で6時間程度の短い時間だったので、そこまで深く学生と関わる機会があったわけではありませんが、幾つか印象に残ったことがあります。
そのひとつが、「最近の看護学生は、年齢層が幅広い」ということでした。
初めて教室に入った日、不思議な「違和感」を覚えました。
私が看護学校に通っていたのは、もう20年も前のことですが、当時、看護学校というのは高校卒業後の女子が大半を占めていたものです。
中には、短大や大学を卒業してから入ってきた人や1年間浪人して入ってきた人もいましたが、ほぼ全員が20歳前後の女子だったのです。
しかし、私が講師に行った看護学校は、「20歳前後」と思われる学生は半分程度。
あとの半分は、明らかに30歳を超えており、中には40歳を超えているであろう人もいました。
その光景を見て、私は「看護師業界は変わりつつある」と感じました。
看護師業界は「新卒=新社会人」という方程式が崩されつつある
私が肌で感じた通りのことが起こりました。
その春、私の勤務していたT大学病院に新採用となった看護師は、新卒の半分が30歳を超えていたのです。
ちなみに、この年のT大学病院では、上層部の意向で意図的に「新社会人」ではない新卒者を多く採用する傾向がありました。
治験や先進医療を多く扱うT大学病院では、「新社会人」よりも人生経験とコミュニケーション能力に長けた「社会人経験組」に期待をかけたのです。
多くは社会人経験者で、中には、大学(看護学部以外)を卒業後に、看護大学・専門学校に入り直したという人もいました。
それまでの「新卒=新社会人」という方程式は、必ずしも当てはまらなくなりました。
「やる気」だけでは乗り越えられない30代の壁
私の勤務する病棟に配属になったのは、30代前半の女性Kさんでした。
Kさんは4年制大学を卒業後、金融機関に就職。
しかし、将来的な安定と仕事へのやりがいを求めて、看護師を目指したそうです。
Kさんは学力が高く、勉強はできるタイプでした。そのため、疾患に関する知識は有していました。
患者とのコミュニケーションもスムーズで、言葉遣いが丁寧で落ち着いた印象のKさんは、新人とは思えない貫禄がありました。
年齢層が幅広い部署だったこともあり、スタッフとも打ち解けていきました。
10歳以上も年齢が下の同期とも仲良くしていました。
しかし、夏頃から欠勤が目立つようになりました。
特に、夜勤をした後は、数日間顔色が優れず、明らかに痩せていきました。
当時Kさんの直属上司だった私は、Kさんと面談をしました。
Kさんはもともと「頭痛持ち」だったそうですが、痛み止めを飲む頻度が増えたと話しました。
また、就職して1ヶ月経った頃から生理不順になり、体調が優れなくなったと話しました。
特に夜勤が辛いと、涙ながらに話しました。
「もっと頑張りたいのだが、身体がついていかない」と切実な悩みを打ち明けたのです。
私はKさんの欠勤を、勝手に「精神的な問題」と考えていたのですが、実際は「身体的な問題」によるものでした。
30代で「夜勤のある生活」を始めるのは、想像以上に酷なことらしい…
実は、20代前半で看護師になった人には、この「30代から夜勤を始める人」の辛さが充分に理解できません。
20代前半から当たり前のように夜勤のある生活をしていると、その「不規則な生活」に体が慣れてしまって、むしろ日勤が続くことの方が酷に感じるほどです。
しかし、OLのように30代まで規則的な生活をしてきた人にとっては、夜勤の身体的負担は想像を絶するようです。
また、病棟は日勤の時も、数時間動きっぱなしで水分補給もままならない状態がほとんどです。
デスクワークが主だった生活をしてきた人にとっては、これもまた負担が大きいようです。
Kさんは、師長や看護部長と話し合った末、夜勤をなくし、「日勤のみ」の働き方に変えました。
体力的には多少楽になったようでしたが、夜勤をなくしたことで、他の同期との間に確実に経験値による差をつけられてしまいました。
看護師の仕事は、夜勤で学ぶことも多いです。
夜勤を経験することで、新人看護師はメキメキと成長していきます。
日勤に比べて大人数を受け持つ夜勤を経験すると、効率良い動き方が身に付きます。
また、終末期患者の看取りを経験する機会も多く、日勤しかしないKさんと夜勤で独り立ちしている新人看護師とは、明らかに差がついていきました。
「外来看護」にやりがいを見出したKさん
そんな状況を見かねた師長は、看護部長とも相談し、Kさんに外来への異動を打診しました。
最初、Kさんは外来への異動を「左遷」同様に受け取っていたようです。
しかし、いざ外来へ異動してみると、想像とは全く違う世界だったようです。
Kさんは、外来を「のんびりした部署」と思っていたそうですが、実際には即座の判断力と看護実践力が必要とされます。
多くの患者の中から援助が必要な患者を選び出し、限られた時間でケアを提供するという外来看護の楽しさに目覚めたようでした。
病棟と比べてスタッフの年齢層も高い外来は、Kさんにとっても居心地が良かったようで、Kさんは病棟にいた頃よりも生き生きと仕事をしているように見えました。
30代で看護師を目指す時のポイント&注意点
1.同世代が多い学校もある
近年、30代で看護師を目指す人が増えています。
他の分野の学部・学校と比べると、30代の比率が高いので、年齢的なことはあまり気にしなくても大丈夫です。
4年制の大学だと年齢制限で入学できない可能性がありますが、多くの専門学校では30代の学生を受け入れています。
事前に学生の年齢構成などもリサーチしておくと、同世代が比較的多い学校を見つけられるでしょう。
2.体力を過信しない
看護師の仕事は、想像以上に肉体を酷使します。
自身の体力を過信せず、無理のない働き方を考えましょう。
また、日頃から体力づくりや体調管理を意識しておくことも大切です。
3.ライフイベントの影響を考慮する
30代で結婚する方も多く、女性の場合は出産をするかも知れません。
看護師は、就職してからも多くの病院で「卒後教育」と呼ばれる教育期間があります。
結婚・出産の予定がある方は、そういったことも考慮して、計画を立てましょう。
4.常にその時期に合った働き方を見極め、無理をしない
多くの看護師は、新卒で就職した病院で夜勤を経験します。
しかし、30代の場合、体力的な問題や家庭の事情で、必ずしも夜勤ができる人ばかりではありません。
もし、「夜勤をやってみたけれど、とても辛かった」というような場合は、無理をせず働き方を見直した方が良いでしょう。
上司に相談し、働き方を見直す方向で調整しましょう。
看護師の働く場所、働き方は非常に幅広いです。
自分に合った職場・働き方を見つけましょう。
30代の就職・転職には看護師転職サイトが便利
看護師転職サイトは、転職だけでなく、看護学生の相談にも応じてくれます。
また、雇用条件だけでなく、内部の人間関係やスタッフの年齢構成、離職率など、本来は入職してからでないとわからないような詳細な内部情報まで事前にリサーチしてくれます。
経験豊富な専任コンサルタントが親身になって相談に乗ってくれますので、安心して利用してください。