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ナースフューチャーへようこそ。副看護師長のレイカです。看護師として、これまで16年働いてきました。あなたの看護師転職をお助けします!
看護師働き方診断

看護師の転職先の同僚でうつになってしまった同期のSさん。同期がうつ病になったら何をすべきか…

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新卒時代の同期と転職先の同期との違い

6階東病棟には、
私の同期が2名いましたが、

 

「同期」と言っても、
新卒時代のそれとは、
ちょっと異なる気がします。

 

 

 

私の場合、
新卒時代の「同期」は、
全員が真っ新の新人で、
更に年齢も同じだったため、

 

「友達」と同じような感覚で、
接していました。

 

 

 

しかし、
T大学病院での「同期」は、
入職時期が同じというだけで、
看護師経験も年齢も、
全く異なっていました。

 

 

そのため、
時折「どう接して良いのかわからない…」
ということもありました。

 

 

 

看護師経験年数…その内容は人それぞれ

私も含めた同期3名のうち、
私が最も年上で看護師経験も最長でした。

 

 

 

もう1名は新卒のI君。

 

 

 

そしてもう1名は、
産婦人科の個人病院で、
2年間の看護師経験を持つ、
Sさんでした。

 

 

 

Sさんは、
年齢は私の3つ下の25歳。

 

 

 

I君と同学年でした。

 

 

 

いわゆる「御礼奉公」で、
産婦人科の個人病院に、
2年間在籍していたそうです。

 

 

 

普通分娩がメインの、
産婦人科であったため、

 

一般的な看護技術は、
あまり経験がなく、
気管内吸引や点滴管理も、
おぼつかない様子でした。

 

 

 

また、一般的な降圧剤や抗生剤の、
名前がわからず、
毎朝の情報収集では、
かなり苦労していました。

 

 

 

看護師としてのキャリアは、
I君よりも上でしたが、

 

看護技術の面では、
准看の経験を持つ、
I君の方が一歩リードしていました。

 

 

 

「○年目」と一口に言っても、
その経験内容は様々です。

 

 

 

しかし、
それぞれの職場には、
「○年目とはこうあるべき」
という教育基準のようなものが存在し、

 

それと照らし合わせて
「できる人」「できない人」
というレッテルを貼るのです。

 

 

 

Sさんの知識・技術は、
T大学病院の「3年目」の基準に、
届いておらず、

 

病棟内で、
「期待外れの既卒者」
という扱いをされるようになりました。

 

 

 

「元気づけて」と言われても…

O師長は、
Sさんに面と向かって、

 

「あなたを3年目だと思って、
受け入れる準備をしていたんだけど、
新卒と同じように指導しないと、
ダメみたいね」

 

と言いました。

 

 

 

副師長のKさんは、
業務的にもメンタル的にも、
Sさんをフォローしてくれていましたが、
日に日にSさんが憔悴していくのがわかりました。

 

 

 

時々、集中力がなさそうに、
ぼーっとしているSさんの姿を
度々見かけるようになりました。

 

 

 

この時期、
私は既に夜勤も独り立ちをしており、
他のスタッフと同様に、
シフト勤務をしていましたが、

 

SさんとI君はまだフォローが必要で、
日勤のみの勤務でした。

 

 

 

そのため、
それまで毎週のように、
開催していた「同期会」も、
ほとんど消滅状態となっていました。

 

 

 

ある日、
副師長のKさんから、

 

「Sさん、精神的に、
かなり参っているみたいだから、
ちょっと食事にでも連れ出して、
元気づけてあげて」

 

と言われました。

 

 

 

副師長として部下を、
いたわる気持ちから、

 

Sさんと同期の私に、
声を掛けたのでしょう。

 

 

 

正直、
私はこの手のことが苦手です。

 

 

 

もちろんSさんに、
元気になって欲しい気持ちは、
ありますが、

 

仕事に関することは、
最終的には自分自身で、
解決するしかない、
という考え方の持ち主なのです。

 

 

 

しかし、
これも同期としての、
役目の一つなのかも知れないと考え、
思い切ってSさんを、
食事に誘ってみました。

 

 

 

「今週、空いている日にゴハン行かない?」

 

とメールすると、

 

「行きましょう!」

 

と、少なくとも文面上は、
元気そうな返信がありました。

 

 

 

誘ってみたのはいいけれど、
どう元気づけたら良いのやら…

 

と悩みながら、
その食事の日を迎えたのでした。

 

 

 

Sさんのカラ元気、実は…

Sさんと食事の約束をした当日、
私は日勤で、Sさんは休みでした。

 

 

 

Sさんは、

 

「日勤の後だと、
私は何時に仕事が終わるかわからないから…」

 

と、敢えて自分が休みの日を、
指定してきたのです。

 

 

 

「今日はどこか出かけていたの?」

 

などと他愛ない会話をしながら、
私は本題に入るタイミングを、
うかがっていました。

 

 

 

しかし、Sさんは絶え間なく喋り続け、
なかなか私に会話の主導権を、
渡してくれませんでした。

 

「こんなに喋る人だったっけ?」

 

と、私は呆気にとられながら、
ハイテンションで喋り続ける、
Sさんの話を聞いていました。

 

 

 

ふと、

 

「もう、入職して半年経ったね」

 

という会話から、
仕事の話になりました。

 

 

 

Sさんの方から、

 

「実は…」と

 

切り出しました。

 

 

「先月から精神科に通って、
うつの薬を飲んでいるの。

 

ここに就職してから、
全然仕事についていけなくて、

 

O師長からも嫌味を言われて…。

 

でも、薬の量が、
まだうまく調整できてなくて、
ぼーっとしちゃう日とか、
逆にハイテンションになっちゃう日が、
あるんだよね」

 

 

 

私は、Sさんを、
元気づけている場合ではないと、
思いました。

 

 

 

「職場の人間」
としては元気づけるべき、
なのでしょうが、

 

このままT大学病院での勤務を、
続けることがSさんにとって、
あまり良い選択ではない気がしたからです。

 

 

 

「Sさんは、ここで仕事を続けるの?」

 

 

「実は…、迷っているんだよね。

 

親元を離れたのも初めてで、
そういうことも、
影響しているのかなって思って。

 

 

やっぱり、
実家から通えるところの方が、
良かったのかも知れない」

 

 

 

「うん、他にも病院はたくさんあるしね」

 

 

 

翌日から、
抗うつ剤を内服しながら、
仕事を続けているSさんを見ていて、
いたたまれなくなることが、
度々ありました。

 

 

 

相変わらず、
O師長はSさんに対して当たりが強く、
周囲も見て見ぬふりをするのです。

 

 

 

私は、Sさんに、

 

「副師長のKさんに相談してみたら?
心配してるよ」

 

と言いました。

 

 

 

Sさんはその日、Kさんに、
抗うつ剤を内服していることを、
打ち明けたそうです。

 

 

 

するとKさんは驚きもせず、

 

「やっぱりね。そうだと思った」

 

と言ったそうです。

 

 

 

やはり看護師の観察眼は鋭いのです。

 

 

 

転職しないと解決しない問題もある

数日後、Kさんは私に、

 

「Sさん、やっぱり、
うつの薬飲んでいるんだってね」

 

と言いました。

 

 

 

私は、

 

「正直、Sさんがこのまま、
この病院で働くことが、
良いことなのか、
わからなくなりました」

 

と、素直な気持ちを、
Kさんに打ち明けました。

 

 

 

それまでは何となく、

 

「仕事をすぐに辞めるのは、
良くないこと。

 

嫌なことがあっても、
頑張って続けるのが良いこと」

 

という理想論が私の中にありました。

 

 

 

しかし、Sさんを見ていて、
必ずしも、

 

「仕事を頑張る」

 

ということが、

 

「良いこと」

 

「幸せなこと」

 

ではないような気がしてきました。

 

 

 

Kさんも同様のことを話し、

 

「Sさんにとっては、
実家から通える職場の方が、
良いのかも知れないね。

 

辞めた方が彼女にとっては、
良いことなのかも知れないね」

 

と言いました。

 

 

 

副師長であるKさんが、
Sさんを無理に、
引き止めようとせず、

 

そのような判断を下したことに、
私は驚きとともに、
人間としての暖かみを感じました。

 

 

 

数週間後、
Sさんは退職を決め、
その後実家から通える、
茨城の総合病院に、
転職していきました。

 

 

 

Sさんとの出会いで、

 

「仕事の頑張り方」

 

にも様々な方法がある、
ということに気付きました。

 

 

 

ひとつの職場で長く続けることも
「頑張る」ことなのでしょうし、

 

看護師という仕事を続けるために、
自分に合った職場を探すこともまた、
「頑張る」ことなのでしょう。

 

 

 

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