新卒高学歴の新人看護師はいじめに遭いやすい?プリセプターのイジメ
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高学歴の新人看護師K君の話
今回は、私が一緒に働いていた後輩の男性看護師K君の話です。
K君は、国立大学の看護学部を卒業後、看護師免許を取得しながらも就職せずに大学院に進学。
大学院で医療安全について学んでから、私の勤務する国立大学の付属病院に新卒として就職してきました。
そのため、新卒でも年齢は20代半ばになっていました。
本人にその気はなかったのかも知れませんが、一流国立大学と大学院を出たK君は、「超高学歴の新卒が入ってくる!」と噂になり、鳴り物入りで入職してきました。
K君のプリセプターになったMさん
私の勤務する病棟には、K君ともう一人新卒のIさんが配属になりました。
Iさんは、ストレートで専門を卒業した21歳の女性です。
私はIさんのプリセプターになり、K君のプリセプターはベテランのMさんに決まりました。
Mさんは、仕事の面では非常に優秀でしたが、日頃からやや言い方がキツイ面があり、一部のスタッフからは「怖い」と敬遠されていました。
新人のプリセプターの組み合わせが発表になった時、「超高学歴」と噂のK君のプリセプターに決まったMさんは、「私、専門卒なのに、いいのかな?」と、私に話しました。
K君だって「普通の新卒」
K君は学歴ばかりが先行して話題になってしまいましたが、看護師としては全くの未経験者です。
当然、看護技術のレベルは他の新卒と何ら変わりありませんでした。
看護技術チェックなども、同期のIさんと同じくらいのペースで進んでおり、いわゆる「普通の新卒」でした。
ずば抜けて習得が早いわけでもなく、特別後れをとることもなく、新人指導計画の通りに順調に成長していたと思います。
しかし、3ヶ月目の振り返りの時、MさんがK君に下した評価は非常に低いものでした。
Mさんが書いたK君への評価欄には「報告が遅い」「仕事をなかなか覚えない」「やる気が感じられない」など、曖昧な表現が並びました。
「指導」の域を超えて「いじめ(イジメ)」になった瞬間
MさんのK君に対する指導は、日に日に厳しくなりました。
もともとMさんは、新人や後輩に対して厳しい言い方をすることがありましたが、K君に対する態度は、傍から見ても胸が痛くなるほどでした。
じっくり考えてから行動するタイプのK君は、時に動作が緩慢に見えることもあります。
そうするとMさんは、すかさず「何してるの?」「やる気あるの?」となじります。
ある日、K君が座って記録を書いている時、何か考え事をしていたようで、肘をついていまいした。
すると、MさんはK君の腕を掴み、「何なの?この手」と払いのけるような仕草をしました。
K君も周りにいたスタッフも唖然とし、それ以降Mさんがいる時のナースステーションは何となく重苦しい雰囲気が漂うようになりました。
ある日、K君が業務上のことでMさんに質問をしました。
Mさんは淡々と無表情で説明をし、K君は「ありがとうございました」と言ってナースステーションを出ようとしました。
すると、明らかにK君に聞こえるような声で「こんなことも知らないの?このド素人が!」と言いました。
その瞬間、MさんのK君の対する態度が「指導」ではなく、「いじめ(イジメ)」に該当することを、周囲のスタッフも確信しました。
K君に見られた異変
それでもK君は、休まず出勤していました。
周囲のスタッフは、そんなK君を「えらいよね」と、同情の眼差しで見ていました。
しかし、徐々にK君に異変が感じられるようになりました。
まず、Mさんがいる場では、一切笑顔が見られなくなりました。
Mさんに何か報告したり話しかけたりする時は、明らかに声が震えており、緊張しているのが伝わりました。
Mさんへの報告前には、メモ帳に報告内容を下書きしている姿も見られました。
このままでは、K君は潰されてしまうのではないか…と、誰もが心配していました。
カウンセラーの前でも気丈に振舞ったK君
この病院では、新人看護師は定期的に臨床心理士のカウンセリングを受けることになっており、K君もカウンセリングを受けていました。
しかしK君は、カウンセラーの前でもMさんから受けているひどい仕打ちについて打ち明けなかったそうです。
自分自身で、「いじめ(イジメ)に遭っている」という事実を認めたくなかったのかも知れません。
K君が退職を決意した出来事
入職から半年が過ぎ、秋も終わりに近づいた頃、思わぬスクープが舞い込んできました。
なんと、Mさんが副師長に昇格することが決まったというのです。
それを聞いて穏やかでいられなかったのはK君でした。
それまで、Mさんからのいじめ(イジメ)に耐えながらも、弱音を吐いたり愚痴を言ったりすることは一切しなかったK君でしたが、Mさんの昇格の話を聞き、「この病院は、人を見る目がないと思う。そんな病院で長く働いても、正当な評価が得られるはずがない」と、冷静に語りました。
そして、看護部長に年度末での退職を申し出たのです。
高学歴の新卒看護師はいじめ(イジメ)の対象になりやすい
退職の意向を示したK君に対し、看護部長は面談を行いました。
実は、看護部長とK君は同じ大学の出身であり、そのことから看護部長もK君のことは気にかけていたようです。
K君がこれまでのいじめ(イジメ)の経緯を話すと、看護部長は驚きながらも「高学歴の新卒看護師はいじめ(イジメ)の対象になりやすい」ということに理解を示しました。
自分自身も、そのことで苦しんだことがあるようです。
専門卒であることにコンプレックスを持つMさんがK君のプリセプターになったことが、Mさんの劣等感を更に強めた可能性があるとも話したそうです。
それまでいじめ(イジメ)に気付かなかったことを、看護部長はK君に詫びました。
職場が変わることで看護師人生が一変したK君
退職を申し出たK君に対し、看護部長は「それならば病院を異動してはどうか?」と提案しました。
この病院は大学の附属病院で、系列の病院がいくつかありました。
その系列病院のひとつに、看護研究などに熱心な病院があり、研究目的で院卒の看護師が多く在籍している病院があったのです。
その特徴から新卒は採用していなかったのですが、K君の院生時代の研究内容などと照らし合わせると「K君に向いているのではないか」と、看護部長は判断したようです。
異例の出来事ではありましたが、K君は新年度からそちらの病院に異動となることが決まりました。
それが決まってから、MさんのK君に対する執拗ないじめ(イジメ)はフェードアウトしていきました。
傍から見ると、看護部長がK君に味方した形に見え、Mさんの方が哀れな感じがしました。
それを一番強く感じ取ったのは、他ならぬMさんだったのかも知れません。
新年度を迎え、K君は系列病院に異動となりました。
新たな職場でK君は気の合う仲間に恵まれ、研究論文などでその名を度々目にするようになりました。
同じような学歴を持つ看護師の友人とは話も合うようです。
中にはK君と同じように、新卒時代に学歴にまつわるいじめ(イジメ)に遭った経験を持つ看護師も多いそうです。
K君自身は学歴を鼻にかけるようなことはしませんでしたが、K君は自身の経験から「看護師は、高学歴ゆえにいじめ(イジメ)に遭うこともある。
特に、年配の看護師の中には『専門卒の看護師のほうが現場で使いものになる』と考えている人も多く、そのような風潮のある病院は大卒・院卒の看護師にとっては働きづらい。
就職先を決める時は、学歴の傾向も調べておくと良いのではないか」と話していました。
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あなたがいじめ(イジメ)に遭っているのは、K君のように、職場と自分の相性が悪いだけかも知れません。
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