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看護師働き方診断

お母さんのように優しかった看護師のM師長、しかし…「優しい上司」の弊害とは?

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師長が変わると職場も変わる!

威圧的で権力偏重主義だったH、
師長が解雇され、

 

新たに救急室の師長となったのは、
50代半ば過ぎのM師長でした。

 

 

 

H師長とは対照的に温厚な性格で、
いつもにこやかにしていました。

 

 

 

新人の私たちにも、
「ちゃんとご飯食べてるの?」などと、
お母さんのように優しく声を掛けてくれました。

 

 

 

H師長の頃は、師長というのは、

 

「必要な時以外は話しかけてはいけない人」

 

というイメージで、
何か用事がある時でも、
声を掛けるのに非常に緊張したものです。

 

 

 

師長が替わって初めての部署会の時、
M師長がちょっとした冗談を言いました。

 

 

 

すると、
スタッフ全員の動きがピタッと止まったのです。

 

 

少し間をおいて、
皆笑い始めました。

 

 

 

その様子を見たM師長は、
つぶやくようにこう言いました。

 

 

 

「…あなたたち、
ずいぶんと抑え込まれてたのね」

 

 

 

それは、
H師長に対する、
非難のようにも受け取れました。

 

 

 

確かに、

 

M師長に替わってから、
救急室の雰囲気が、
だいぶ変わったように思いました。

 

 

 

先輩方を見ていても、
以前より更にいきいきと、
働いている印象を受けました。

 

 

 

心なしか、
休憩時間も賑やかになり、
スタッフの笑顔が増えたような気がしました。

 

 

 

師長が替わるだけで、
こんなにも職場の雰囲気が変わるものなのだと、
新人の私たちは驚きました。

 

 

 

休み希望のルールが変わり、プライベートも充実

H師長の頃は、
休みの希望は師長に直談判するのが、
ルールでした。

 

 

 

休みたい日付をメモに書き、
それをH師長に渡しながら、
休みたい理由を説明し、

 

師長の許可が下りたら、
休めるのです。

 

 

 

そのため、
希望の日に休みをもらうのは、
一苦労でした。

 

 

 

友人の結婚式があると、
祝福の気持ちよりも、

 

「休み希望出すの憂鬱だな」

 

という感情の方が、
先に立ってしまったほどです。

 

 

 

休み希望を出すと、
どんな理由であれ、
必ず嫌味を言われました。

 

 

 

「あらあら、
新人さんなのに休みの希望を出すの?

 

」などと言われるのは序の口です。

 

 

 

研修参加のための、
休み希望にも関わらず、

 

「忙しいのに」

 

「みんながこんなに希望を出したら、
救急室は回らなくなるわ

 

」などと言われることもありました。

 

 

 

結果的に休みをくれても、
気持ち良く休めることはありませんでした。

 

 

 

しかし、
M師長に替わってからは、
休み希望のシステムが一変しました。

 

 

 

休憩室に名簿が置かれ、
期日までに自由に、
休み希望を書き込むのです。

 

 

 

理由も不要でした。

 

 

 

「同じ病院でも、
師長が違うだけで、
こんなにも色々なことが違うんだ」と、

 

新人の私たちは衝撃を受けました。

 

 

 

新人の私たちも、
コンサートに行く予定などを立てられるようになり、
プライベートも充実していきました。

 

 

 

「優しい師長」の意外な弊害

シフト勤務の看護師にとって、
勤務表は、

 

「永遠のベストセラー」

 

と言われるほど重要なものです。

 

 

月末近くになって翌月の勤務表が出ると、
皆「出たよ!出たよ!」と、
穴が空くほど勤務表を見るのです。

 

 

 

M師長に替わってから、
休み希望が出しやすくなった私たちスタッフは、
皆こぞって希望を書き入れました。

 

 

 

さすがに新人の私たちは、
先輩がだいたいの希望を、
書き入れたのを確認してから、
ちょっと遠慮気味に書き入れていましたが。

 

 

 

最初の頃は先輩方も、
月に2回程度の希望しか入れていませんでしたが、
徐々に希望を入れる日が増えていきました。

 

 

 

多い人だと、
1ヶ月の休みの殆どを、
指定しているような有様でした。

 

 

 

すると、当然のことですが、
休み希望が、
必ずしも通らなくなっていったのです。

 

 

 

徐々に、

 

「○○さん、休み希望出し過ぎだよね」

 

などという陰口を耳にする機会が、
増えていきました。

 

 

 

救急室は、
比較的人間関係が良好な部署だったので、

 

このような形で、
スタッフの陰口を聞くのは初めてでした。

 

 

 

そんな先輩の陰口を聞きながら、

 

「もしかしたら、
これまではH師長への反発心で、
スタッフが一致団結していただけなのではないか?」

 

 

という不安がよぎりました。

 

 

仕事上の関係に限らず、人は、

 

「共通の好きな人がいる人」より、

 

「共通の嫌いな人がいる人」

 

に強い親近感を覚えるものです。

 

 

 

これまでの救急室は、
H師長という、

 

「共通の嫌いな人」

 

がいるお陰で人間関係が、
良好に保たれていたということが、
徐々に鮮明になってきました。

 

 

 

最悪の形で職場を去った、
H師長でしたが、

 

思わぬところで、
人間関係を良好にするための、
緩衝材になっていたのだ、
という皮肉な現実を知りました。

 

 

 

「嫌われ役」を買って出た主任

休み希望が「自由化」したことで、
徐々に人間関係に摩擦が生じ始めた救急室。

 

 

 

ある時の部署会で、
主任が「休み希望の出し方」
を議題に取り上げました。

 

 

 

主任は、

 

「休み希望は月に2回まで。
希望の重複は1日2名まで。

 

それ以上希望を出した場合は、
休み希望を全て却下する」

 

という取り決めを発表しました。

 

 

 

会議中に反対意見は出ず、
この案は可決され、
早速翌月の勤務から、
適用されることになりました。

 

 

 

主任がいなくなった途端、
先輩方は口々に、

 

「せっかく休み希望が出しやすくなったのに」

 

などと愚痴をこぼしましたが、
その甲斐あってか、

 

休み希望のルールが作られたことで、
スタッフ間の陰口は明らかに減りました。

 

 

 

先輩方にとっては、
あまり歓迎したくないルールだったようですが、
私はこのくらいのルールは必要なものだと思いました。

 

 

 

あまりにも自由な職場というのも、
それなりに働き辛いのだということが、
身に染みてわかったのでした。

 

 

 

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