一般病棟にパーソナリティ障害の患者が入院してきたら?看護師が関わるポイント&管理職者がやるべきこと
ツイート看護師泣かせの「パーソナリティ障害」
看護師として働いていく中で、しばしばパーソナリティ障害の患者に出くわします。
パーソナリティ障害というのは、「病気」なのか「性格」なのかの判断が難しく、仮に精神科で診断がついても治療の施しようがないケースがほとんどです。
日本人は、10人に1人の割合でパーソナリティ障害があるとも言われています。
程度の差があり、ひどくなると社会生活に著しい支障を来します。
パーソナリティ障害の患者は、精神科のみならず、何らかの疾患で一般病棟に入院してくることも多いです。
かつて私が内科病棟で副看護師長をしていた頃、あるパーソナリティ障害の患者が入院してきました。
その患者との関わりの中で疲弊してしまうスタッフが続出し、うつ病を発症して休職してしまった看護師もいたほどでした。
そのため、看護部長と相談し、病棟スタッフ全員に臨床心理士によるカウンセリングを受けさせました。
その臨床心理士によるメンタルサポートは1年以上にも亘って継続されました。
看護師は「プロ」ではあるものの、全ての分野に精通しているわけではありません。
働いたことがない診療科領域の疾患には疎かったりもするものです。
とりわけ、精神科領域に関しては、経験がないと知識が乏しいものです。
パーソナリティ障害は、接し方のポイントを知っているかどうかでスタッフの負担が全く変わってきます。逆に、接し方を間違えると、深みにはまってしまうこともあります。
また、「この患者はパーソナリティ障害である」と理解することで、スタッフの精神的負担は少なくなります。
今回は、一般病棟で遭遇することの多いパーソナリティ障害について解説していきます。
そもそも「パーソナリティ障害」とは?
パーソナリティ障害とは、性格・人格の傾向のうち、本人や周囲が著しい社会生活上の困難を来す状態を言います。
本人が苦痛に感じていることもあれば、本人には全く自覚がないケースもあります。
パーソナリティ障害は、うつ病や双極性障害と違って、一貫性・連続性があるのが特徴です。
一般的に、「店員と客」くらいの関わりであれば、よほど程度のひどいケース以外は問題とならないことがほとんどですが、「患者と看護師」という関係になると、しばしば関わりが難しくなります。
一般病棟でよく見られるパーソナリティ障害と対応のポイント
パーソナリティ障害には様々な型がありますが、病院でしばしば見られるものに、「自己愛性パーソナリティ障害」と「境界性パーソナリティ障害」があります。
この2つについて、具体的に解説していきます。
1.自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害には、2種類あります。
「周囲を全く気にかけないタイプ」(いわゆるワンマンタイプ)と「周囲を過剰に気にかけるタイプ」です。
一見相反する傾向のようですが、「自分は特別な存在である」と思っている点において共通しています。
特徴
- 社会的な成功者が多い。(社長など)
- 自分には偉大な力があって、努力しなくても成功すると思っている。
- 「何で私を怒らせるんだ」などと言うのはこのタイプである可能性が高い。
- 自分は特別な存在だと思っている=特別扱いされるのが当然だと思っている。
例えば、外来で順番を待っている時に、他にも大勢の患者が待っているにも関わらず「私は忙しいから、早く呼んでくれ」などと言ったり、予約が埋まっているのに「今日しか休めないから、何とかしてくれ」などというタイプです。
対応のポイント
- 距離を置く。
- プライベートに踏み込まない。
自己愛性パーソナリティ障害の人とは、距離を近づけすぎたり、プライベートなことを聞いたりすると、「もっと特別扱いしてもらえる」と勘違いされてしまいます。
看護師として必要なことを聞くに留めましょう。
外来などで無理な要求をされた場合は、「患者は皆公平です」という姿勢を見せることも必要です。
一度特別扱いしてしまうと、要求が更にエスカレートしてしまうので、スタッフ全員が共通の認識で接するようにしましょう。
2.境界性パーソナリティ障害
看護師として働いていく中で、最も頭を悩ませるパーソナリティ障害が、この「境界性パーソナリティ障害」です。
特に、境界性パーソナリティ障害の患者が長期入院する場合、病棟スタッフの負担が大きくなります。
特徴
- 感情の起伏が激しい。(「最高から最低へ」または「最低から最高へ」)
- 人を「敵」か「味方」に分類する。
- 「運命の恋」を信じるタイプ。
境界性パーソナリティ障害に特徴的なのが、「敵か味方に分類する」ということです。
境界性パーソナリティ障害の患者は、医療者も「敵」か「味方」に分類します。
「味方」と見なした看護師には親しげに話しかけたりする一方で、「敵」と見なした看護師には常に敵意をむき出しにしたような態度を取ります。
また、「味方」だと思っていた看護師から、ちょっとでも否定的な態度を取られたりすると、途端に「敵」と見なし、態度が急変することも珍しくありません。
例えば、「味方」と思っていた看護師から生活習慣を注意されたり指導を受けたりすることで自分を否定された気持ちになり、「敵」に変換されてしまうことも多いのです。
経過の長い患者では、このようなことを繰り返していくうちに、その病院には「敵」だらけになってしまい、結果的に通院を自己中断してしまうケースもあります。
自ら居場所を失ってしまうのです。
対応のポイント
- 感情に巻き込まれずに、毅然とした対応を心掛ける。
- ルールを設定して接する。ルールは医療者間で共有する。
- ご機嫌をとらない。
- 対応したスタッフのメンタルサポートをする。
- 「味方」のスタッフに負担を押し付けない。
- 「敵でも味方でもない」という態度で接する。
境界性パーソナリティ障害の人は、非常に感情の起伏が激しいため、それに振り回されないことが大切です。
もし、病棟に境界性パーソナリティ障害の患者が入院してきたら、まずはスタッフ全員を対象に「境界性パーソナリティ障害」についての勉強会などを開催して、正しく理解することから始めましょう。
看護師のみならず、看護助手など、患者と関わる職種全てを対象とすると良いです。
そうすることで、患者に迎合して振り回されるスタッフがいなくなります。
境界性パーソナリティ障害の人は、無理な要求をしてくることもあるので、できることと・できないことの線引きをきちんとして、無理なことは毅然と断るようにスタッフにも指導します。
例えば、「個人的な連絡先を教えて欲しい」と言われても教えないことなどです。
特に新人看護師は、患者に嫌われたり罵られたりすることを恐れるあまり、患者に迎合しがちなので、注意が必要です。
また、個人的に罵られたりして傷つくスタッフが出るかも知れないので、スタッフのメンタル状態にも気を配りましょう。
必要なら、スタッフに対する専門家のカウンセリングなども検討しましょう。
また、患者から「○○さんを受け持ちにして欲しい」などと言われることも多いです。
これに対しても、迎合せず、管理職者が毅然と対応します。
「味方」と思われている看護師ばかりに対応を任せるのもやめましょう。その看護師が精神的に疲弊してしまいます。
対応に困ることの多いパーソナリティ障害ですが、看護師として働く上で避けて通れないのも事実です。
正しい対応方法を知って、負担を最小限に対応していきましょう。
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