看護師の副業で個人クリニック勤務はどう?いわゆる“町医者”は看護師経験が少なくても働ける?Hさんに実態を聞きました。
ツイート外を歩くとあちこちに見かける個人クリニック。いわゆる“町医者”です。
最も身近な医療機関で、誰しも一度は足を踏み入れたことがあるはずです。
病棟勤務しか経験のない看護師から見ると、「個人クリニックの看護師ってラクそう」と感じられることもあります。
確かに、検査やオペ出しでバタバタしている様子はなく、静かな雰囲気のクリニックが多いです。
また、受付にいる白衣を着た女性の職種がわからないことも多いです。看護師なのか?薬剤師なのか?受付担当なのか?
個人クリニックというのは、働いたことがない看護師にとっては、まさに未知の世界です。
「本当に楽なのか?」「受付にいるのは誰なのか?」「人間関係は?」…そんな気になる実態を、個人クリニックに勤務して2年のHさんにインタビューします。
まず、Hさんの勤務するクリニックの概要を教えてください。
都内にある個人経営のクリニックです。入院施設はありません。
雑居ビルの1階にあるクリニックで、駅から近いこともあり、小規模ながら患者数は多いです。
院長の人柄も良いせいか、地域の高齢者も多く通っています。
診療科は、「内科・皮膚科」となっていますが、「何でも屋」という感じです。風邪や高血圧などの患者さんも多いですし、ちょっとした怪我の患者さんも来ます。
あと、牽引と電気の機械があって、交通事故後の患者さんも来ます。接骨院のような感じです。近くの大学病院へ紹介することも多く、逆に大学病院から戻ってくる患者さんもいます。
診療時間は9時から17時ですが、週に2日は20時までやっています。
遅くまでやっているので、仕事帰りのサラリーマンなども来ます。
この職場を選んだ理由を教えてください。
私は総合病院の手術室に勤務して5年目になります。
ずっと手術室勤務だと、診療介助などの経験が全くなく、いわゆる「看護師の仕事」があまりできないのです。
そのことに焦りを感じていた頃、同じく手術室勤務の先輩から、このクリニックでのバイトを紹介されました。
副業ということですが、勤務・シフトはどのようになっていますか?
このクリニックは、私のように副業としてやっている看護師が6名います。
専属の看護師は3名です。この9名でシフトを組んでいます。
1回の勤務に看護師は1名です。前の月に、翌月の勤務希望を聞かれます。副業の看護師は、勤務先のシフトが出たら、出勤可能な日を連絡するようになっています。
シフトを組むのは、「リーダー」と呼ばれる看護師です。
このクリニックの看護師は全員パート・アルバイトなので、師長や主任といった役職の看護師はいません。実質、「リーダー」が上司のような役割です。
でも、1回の勤務に看護師1名なので、看護師同士が会うことがありません。なので、メールでやり取りしています。
私は主に、夜勤明けの夕方に入ることが多いです。20時までやっている曜日に、18時から20時までの2時間働くということが多いです。
月の出勤回数は5回くらいです。
他にはどのような医療スタッフがいますか?人間関係はいかがですか?
ひとつの勤務帯に、看護師1名、薬剤師1名、受付1名です。医師は院長1人だけです。
薬剤師、受付のスタッフとは、勤務中に必要な会話をする程度です。勤務前後に休憩室で着替えながらちょっと話をすることはありますが、天気の話とか、差し障りのない会話程度ですね、
薬剤師も受付も50代の女性です。副業でやっている看護師は20代が多いですが、専属の看護師は40代から50代です。
院長先生は、70代のおじいちゃん先生です。のんびりした優しい先生なので、こちらもゆったりした気分で働けます。
看護師同士が会うのは、年に1回の忘年会だけです。忘年会は、院長の呼びかけで毎年やっているそうです。
業務内容・繁忙度を教えてください。
出勤したら、まず診察室の掃除をします。舌圧子など、診療に必要な物品の補充も行います。
患者さんが来ると受付からカルテが回ってくるので、それを順番に診察室に運び、2名ずつ中待合に呼びます。
診察が始まると、診察の介助につきます。ほとんどの場合、患者さんの後ろに立っているだけです。時々、服をまくるのを手伝うくらいです。
採血や注射の指示が出たら、処置スペースで行います。
看護師が自分しかいないので、最初は緊張しました。何度かうまくできないことがあって、先生にやってもらったこともあります。
あと、処置をしながらも、診察の進み具合に気を配らなければならないので、慣れるまではかなり神経を使いました。
処置に夢中になって、患者さんを呼ぶのを忘れてしまい、患者さんや先生をお待たせしてしまったこともありました。
3ヶ月くらい経って慣れてくると、落ち着いてスムーズにできるようになってきました。
繁忙度は、時期によって変わります。特に、冬場など風邪が流行る時期は患者数が増えます。
指導体制はどのようになっていましたか?
最初の3回だけ、他の先輩看護師と一緒に勤務させてもらいました。4回目からは独り立ちです。
採血や注射などの看護技術は「できて当然」という感じで、特に指導はされませんでした。
物品の場所を教わった程度です。牽引や電気の機械の扱い方は、先輩看護師に教わりました。
それ以降は、わからないことは先生に聞くしかなかったです。
大変だと感じる時はありますか?
個人クリニックは、総合病院など規模の大きい病院と違って、コスト意識が非常に高いです。
だから、注射の時に使うテープの長さなどにもうるさいです。
採血も、失敗は許されない風潮があります。スピッツがもったいないので。
あと、口頭指示が基本なので、最初は驚きました。
お給料には満足していますか?
私は時給2500円です。かなり良いと思います。
バイトの日数が少ないので大きな収入にはなりませんが、業務量と金額を考えると、満足しています。
残業はありますか?
ほとんどありません。
時々、患者さんが多い日に15分くらい延長することがありますが、その分もきちんと残業代が支払われます。
副業は体力的・精神的にきつくないですか?
最初は私もその点が不安だったのですが、慣れるまで回数を少なめにしたら大丈夫でした。
今も、無理のないように5回程度にしています。
精神的には、ほとんど負担はありません。
むしろ、業務内容が全く異なるので、気分転換になっています。
今後もこのクリニックでの勤務を続けたいですか?
特別な事情がない限り、続けようと思っています。今のペースなら、あまり負担にならないので。
採血や注射の技術は、クリニックでの副業を始めて格段に上達したと思います。
個人クリニックは“当たりはずれ”があると思いますが、私は“当たり”だったと思います。
個人クリニックのまとめ
以上のインタビューから、個人クリニックの特徴をまとめてみました。
- シフトによっては副業も可能。
- 時給は良い。
- クリニックによって業務内容は大きく異なる。
- 看護師が少ない職場は、技術力・判断力を求められる。
- ある程度の看護技術ができないと厳しい。
- コスト意識が高い。
- 残業は少ない。
- 精神的な負担は少ない。
個人クリニックはたくさんありますが、その業務内容や求められる技術はそれぞれ異なります。
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