看護師業界に根強く残る「お礼奉公」(返済免除の奨学金の支給)|実は違法?お礼奉公中は絶対に退職できないの?
ツイート「お礼奉公」とは?
「お礼奉公」とは、看護学校などの学費を肩代わりしてくれた病院で一定期間働くと、返済が免除されるシステムです。
経済的な理由などで、看護師になりたいけれど学費を工面できない場合に、このシステムを利用するケースが多いです。
准看護師の場合は、病院で看護助手として働きながら、夜間の学校に通うケースもあります。
「学費」としてではなく、「奨学金」としてお金が支給される場合もあります。
学費・奨学金ともに、相場は月3万円程度です。3年間で108万円となる計算です。
奉公期間も3年というところが多いです。決められた病院で3年間勤務すると、この108万円の返済が免除されます。
3年以内に退職してしまったり、決められた病院に就職しなかったりした場合は「一括返済」というルールの病院が多いです。
昔は、他の職業でも「お礼奉公」のシステムが見られましたが、今でもこの制度が残っているのは看護師業界だけのようです。
「お礼奉公」にはどんなメリットがあるのか?
何故、看護師業界に「お礼奉公」が根強く残っているのかというと、双方にそれなりのメリットがあるからなのです。
かく言う私も、「お礼奉公」の恩恵に預かった一人です。
学生時代、月3万円の奨学金を受け、その病院で3年間(実際は7年勤務しました)勤務することを約束しました。
私の出身校は私大病院附属の看護学校ですが、当時(約20年前)は、どの看護学校でもこのシステムが採用されていました。
私の同級生も9割以上が奨学金を受けていました。
裕福な家庭の子でも、「月3万円もらえるなら…」と、奨学金を申し込む学生は多かったです。
「お礼奉公」のメリットを挙げてみましょう
学生側のメリット
- 金銭的な負担が軽減される。家庭の事情で学費の支払いが難しい場合でも、進学が叶う。
- 就職先が決まっている。
- 一定期間働くことで返済が免除される。
病院側のメリット
- 人員確保に繋がる。
学生側にとって最も不安な、「就職先」や「学費」の問題。
そして、病院側にとって深刻な「人員確保」の問題。
「お礼奉公」は、これらの問題を同時に解決できる方法として、今でも根強く残っているのです。
こんな時はどうなるの?「お礼奉公」にまつわる素朴な疑問
1.国家試験に落ちたらどうなるの?
国家試験に落ちると、「看護師」として働くことができません。
多くの病院では、国家試験に落ちたら「看護助手」として病院で採用し、次年度の国家試験まで“浪人”させています。
その間は、学校でも試験対策などの面倒を見ます。次年度の国家試験に合格したら、そこから3年をカウントします。
また、看護師国家試験を受ける際に、“滑り止め”として准看護師の試験も受験させるケースもあります。
2.途中で退職したらどうなるの?
契約上は「全額一括返済」としているところが多いのですが、実際は働いた分だけ減額してくれるケースや、分割払いでもOKとしてくれるケースもあるようです。
もちろん、契約通りに「全額一括返済」を求めてくる病院もあります。
「お礼奉公」は、実は違法?
近年、この「お礼奉公」のシステムについて、違法だと指摘する声が挙がっています。実際に、多くの弁護士は「違法性がある」という見解を述べています。
その根拠は以下の通りです。
- 1.憲法第22条「職業選択の自由」が保証されていない
「お礼奉公」では、学費・奨学金を出してくれた病院で働くことを“強制”しているという解釈ができるため、違憲であるという見方です。
- 2.労働基準法第16条「労働契約の不履行に対する違約金を定めてはいけない」「損害賠償額の予定を決める内容の契約をしてはいけない」に抵触する
退職した場合、就職しなかった場合に奨学金の一括返済を求めており、これが上記の法律に違反しているという解釈です。
返済を肩代わりしてくれる病院がある!?
「お礼奉公」は、学生時代には“恩恵”しかありません。毎月お金はもらえるし、就職活動もしなくて良いのですから、こんなにラッキーなことはありません。
問題は、就職してから。つまり“奉公”期間に入ってからです。
「3年働くつもりで就職したが、人間関係が悪くて辞めたい。でも、一括返済するほどの貯金はないから、辞められない」
「2年目で妊娠してしまった。夜勤のない病院に転職したいが、辞められない」
「いずれは都心のもっと大きな病院に就職したい。でも、3年間働いてからだと、年齢制限に引っかかってしまう」
など、学生時代には恩恵しかもたらさなかった「お礼奉公」が、就職してから“足かせ”となってしまうケースも多いのです。
こんな時に知っておきたいのが、奨学金の返済を肩代わりしてくれる病院があるということです。
つまり、3年間の奉公期間中に退職した場合、本人が全額を一括返済するところを、就職先の病院が肩代わりしてくれるのです。
これなら、就職先の選択肢も大幅に広がりますし、人間関係が辛いのに無理に続ける必要もありません。
奨学金の返済を肩代わりしてくれる病院を探すには、看護師転職サイトへの登録が便利です。
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