看護師として病院で働いていた自分の職場がニュースに出るということに。突然、職場から笑顔が消えた…
ツイート「病院始まって以来の大事なムンテラ」
私がプリセプターになって、
半年ほど経った秋のこと、
プリセプティのOさんと私は、
カンファレンスルームで、
半年の振り返りをしていました。
最初の頃は緊張して、
ガチガチだったOさんも、
だいぶ職場に馴染み、
私もプリセプターという役割に、
やりがいを感じ始めていました。
今後の教育計画について、
Oさんと具体的な話に入ろうと思った時、
突然カンファレンスルームのドアを、
ドンドンとせわしなく、
ノックする音が聞こえてきました。
こちらの返事を待たずに、
ガチャっとドアを開けて、
顔を覗かせたのは師長でした。
普段は穏やかな師長ですが、
この時はかなり焦ったような表情で、
「ちょっと、
この部屋使わせてくれる?」
と言って、ずかずかと、
中に入ってきました。
師長は、
私が広げていた、
新人教育の資料を、
取り上げるようにして、
「病院始まって以来の、
大事なムンテラなの!」
と、私たちに、
カンファレンスルームを、
すぐに空けるように命じました。
私とOさんは、
追い出されるような形で、
カンファレンスルームから引き揚げ、
「私たち、
ちゃんと予約して、
カンファレンスルームを使っていたのにね」
と、二人で愚痴をこぼし、
休憩室の片隅で、
話し合いの続きを始めました。
翌日には、私もOさんも、
そんな出来事を忘れ、
普段通りの日常業務についていました。
半年後、明らかになった「大事なムンテラ」の真相とは…
翌春、
私は看護師4年目を迎えました。
1年間のプリセプターの任を、
無事に終え、
Oさんも2年目看護師として、
立派に成長したと自負していました。
ある朝、
出勤すると病院の前に、
黒塗りのワンボックスカーが、
何台にも連なって停まっていました。
車の傍には、
低い脚立を持った男性が沢山おり、
ちょっと異様な雰囲気でした。
「おそらくテレビ局だろう」
ということは察しがつきました。
職員入口に行くと、
いつもは誰もいない入口のドア、
に物々しく警備員が1名立っていました。
お互いに顔は、
見知っているはずの、
警備員であるにも関わらず、
入口で職員証の提示を、
求められました。
何事かが起きていることは、
疑いようがありませんでした。
白衣に着替えて病棟に着くと、
他のスタッフも「何があったの?」
と話題は持ち切りでした。
普段とは明らかに、
違う空気を感じながら、
朝の情報収集をしていると、
険しい顔をした師長と主任が、
ナースステーションに入ってきました。
主任が、
「全員集合してください」
と号令をかけると、
始業開始時刻前にも関わらず、
スタッフ全員が、
ナースステーションに集まりました。
今朝から起こっている、
「非常事態」
についての説明であることは、
間違いなく、
私たちスタッフは、
いつになく緊張した面持ちで、
その場に立ちました。
師長は、
「もっと私の近くに集まって」
と、スタッフを近くに、
呼び寄せました。
そして、
声のトーンを少し落として、
話し始めました。
「今朝から報道陣が、
病院に大勢来ていたので、
お気づきの方もいるかと思います。
実は、
昨年の手術中に起こった医療事故で、
患者さんがお亡くなりになりました。
警察による調査も行われた結果、
○○医師、△△医師、××医師の3名が、
書類送検されました」
その3名の医師は、
4B病棟にもよく顔を出しており、
お互いに顔を見知った医師たちでした。
言われてみると、
ここ数週間、
姿が見えなかったのですが、
「学会にでも行っているのだろう」
くらいにしか思っていなかったのです。
一緒に仕事をしていた医師が、
書類送検されるという事態に、
私たちは言葉を失い、
お互いに無言で顔を見合わせました。
「一部のニュース番組では、
今朝、既にこの件が報道されています。
そのため、
患者さんから何か、
聞かれることがあるかも知れません。
そのような場合は、
“後ほど、院長と看護部長が説明に来ます”
とだけ伝えて下さい。
くれぐれも、
勝手な判断で、
何か喋ったりしないように。
それ以外は、
あなたたちもいつも通りにしていてください」
それから師長は、
午後から記者会見があることを説明し、
足早にどこかへ消えていきました。
自分の職場が、
ニュースに出てしまったということ、
そして、
一緒に仕事をしていた医師が、
書類送検されたということ、
これらの事実を受け止め、
「いつも通り」にできるほど、
私たちスタッフは成熟していませんでした。
患者さんの前では辛うじて、
平静を保っているものの、
ナースステーションの雰囲気は重苦しく、
4B病棟のスタッフからは笑顔が消えました。
朝のニュース番組を見た患者さんも多く、
「これ、ひどいねぇ」
と正直な感想を漏らす患者さんもいれば、
「大変なことになったね」
「今日は大変なんでしょう?」
などと、私たちスタッフに、
気遣いを見せる患者さんまでいました。
そして、
お昼休憩でOさんと、
一緒になった時でした。
半年前、
Oさんの教育計画の話し合いをしていた時、
「病院始まって以来の大事なムンテラがある」
と言って、カンファレンスルームを、
追い出された出来事を思い出したのです。
この日、
「大事なムンテラ」の真相が、
明らかになりました。
当事者でなくても苦悩は続く…
午後の記者会見は、
夕方のニュースで大々的に報道され、
更には翌日の朝刊の一面になりました。
たまたまその時期、
他に目立った事件が、
起こらなかったこともあり、
連日のニュースやワイドショーで、
A大学病院の医療事故が、
取り上げられました。
当事者でなくても、
「A大学病院の職員」ということだけで、
私たちスタッフの苦悩の日々は続くのでした。
職場の安全管理に不安を抱いたら…
職場の安全管理は、
患者さんの生命を守るとともに、
働いているスタッフを守るものでもあります。
転職を考える時は、
給与や休暇などの待遇面だけでなく、
安全管理面に関する情報取集も、
怠らないようにしましょう。
看護師転職サイトなら、
院内のローカルルールも含めた、
詳細な内部情報まで、
事前にリサーチしてくれます。
入職後のギャップを、
最小限にすることで、
「こんなはずじゃなかった」
という後悔もなくなります。
転職を考えたら、
看護師転職サイトを賢く活用しましょう。