看護師のやってはいけないクレーム対応【NGクレーム対応の例】主任・リーダー看護師のためのクレーム対応入門
ツイート病院での「クレーム対応」は看護技術である
以前は、「クレーム」というのは、「起きてはならないこと」と考えられており、クレーム対応というのは「イレギュラーな出来事」と認識されていました。
しかし、時代の流れと共に考え方も変化し、近年では、「クレーム」を「常に起こりうるものである」と認識するようになりました。
また、利用者の権利者意識の高まりに伴って、サービス業などでは「クレーム対応」の機会が増えています。
「クレーム対応」の研修を専門に行う企業も存在するほどです。
しかし、病院での「クレーム対応」とホテルやデパートなどでの「クレーム対応」は、性質が異なります。
まず、デパートやホテルであれば、利用者は不満を感じたら、その施設を利用しなければ良いのです。
しかし、病院はそうはいきません。
治療の途中であれば、その病院に不満を感じても、通わなければなりません。
病院を変えるにしても、紹介先を探し、医療情報提供書を作成するなど、患者と病院との関わりは続くことになります。
地方や僻地など、医療施設が充分でない土地であれば、患者は不満を感じてもその病院に通わざるを得ない状況も出てきます。
そのため、病院での「クレーム対応」は、1回きりでは終わらないケースが多いのです。
また、患者は病気であったり、薬物の影響下にあることも、他でのクレーム対応と異なることです。
例えば、精神疾患の患者や体調がすぐれない患者などは、精神的に不安定で、些細なことでも不安や不満を感じます。
ホルモン剤を投与中の患者も同様で、平常時とは違った精神状態であることが多いです。
患者家族も不安定な状態であることが多いです。
そのため、病院でクレームを受けた場合は、まずはそれが「病院側に落ち度があるもの」なのか「患者の精神的不安定によるもの」なのかを見極める必要があります。
この線引きは非常に難しく、一定の基準で見極められるものではありません。
様々な要因が絡み合って起こるクレームに対応することは、看護技術の一部だと言っても過言ではないでしょう。
「やってはいけないクレーム対応」こんな対応は悪質クレーマーを生む
「クレーム対応」は知識と技術と経験が必要です。
初めての対応でうまくいくことは稀でしょう。
しかし、対応に慣れていなくても、「これだけは絶対にやってはいけない」ということがいくつかあります。
まずは、それを押さえておきましょう。
1.その患者を特別扱いする
主に外来などで多いのが、待ち時間に関するクレームです。
クレームがあった患者に対し、次から毎回一番に呼ぶなど、特別扱いをすることはしてはいけません。
患者は「この病院は自分の言う通りになる」と受け取り、その後、無理な要求をしてくる可能性があります。
常に患者には公平性を持って接するようにしましょう。
2.署名・押印・謝罪文
署名や謝罪文などを要求するのは、悪質クレームの典型です。
その場しのぎで署名をすることは、絶対にしてはいけません。
後に裁判などに発展した場合、不利になることもあります。
また、スタッフにもそのような教育が必要です。
3.無理な約束をする
患者の中には、無理な要求をしてくる人もいます。
「毎回、自分を必ず一番に呼べ」「受け持ちは○○さんにして欲しい」などです。
守れない約束や特別扱いに繋がるような約束はしてはいけません。
4.一人で対応する
クレームは、時に暴力沙汰になることもあります。
また、後に「言った」「言わない」の水掛け論になることもあります。
このような事態から看護師を守るためにも、一人で対応してはいけません。
特に、個室で対応する場合は、絶対に2名以上の医療者が同席しましょう。
女性看護師だけで対応する場合は、暴力沙汰に備えて、医師や事務員に応援を依頼します。
患者が同席を拒む場合は、部屋の外に待機してもらいます。
また、個室では、医療者は必ずドア側に座るようにしましょう。
万が一の時に、逃げたり応援を要請することができるように備えておきます。
5.連絡先を教える
クレーム対応において、「連絡先を教えろ」などと言われることもあります。
このような要求にも応じてはいけません。
連絡先を聞かれたら、代表番号のみ教えるようにしましょう。
部署への直通番号を教えると、業務の妨げになることもあり、組織での対応が難しくなってしまいます。
また、個人の携帯電話番号を聞かれても、絶対に教えないよう、スタッフへも教育が必要です。
間違った対応にならないように
これらの間違った対応は、患者を「悪質クレーマー化」することがあります。
主任・リーダー看護師はもとより、日頃からスタッフへも教育しておくことが大切です。
クレーム対応で「うまくいった」と感じられることは少ないかも知れません。
しかし、そんな悶々としたり後悔したりする経験が積み重なって糧となっていくのです。
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